発達状況に応じた感覚統合訓練の個別化アプローチ

目次（もくじ）

1. 感覚統合とは

感覚統合（Sensory Integration）は、私たちが日常生活をスムーズに過ごすために必要な感覚情報を、脳がうまくまとめて処理する力を指します。日本でも、この感覚統合は子どもの発達支援やリハビリテーションの現場でとても重視されています。

日本における感覚統合の基本的な考え方

日本では、「見る」「聞く」「触れる」「動く」など、さまざまな感覚が適切に働いていることが、学習や社会生活、運動能力の土台になると考えられています。特に発達段階にある子どもたちにとっては、自分の体や周囲の環境を理解し、安全に活動するためにも重要です。

主な感覚の種類と役割

感覚の種類	役割
視覚	物を見る、空間を把握する
聴覚	音を聞き分ける、言葉を理解する
触覚	物の硬さや温度を感じる、自分の体を認識する
前庭感覚	バランスを取る、姿勢を保つ
固有受容感覚（深部感覚）	筋肉や関節の動きを感じる、力加減を調整する

発達支援における感覚統合の役割

日本では、保育園や幼稚園、小学校などでも感覚統合の観点から子どもたちの成長をサポートしています。例えば、落ち着きがない・集中しづらい・手先が不器用といった悩みがある場合、それぞれのお子さんの発達状況に応じて、最適な感覚統合訓練（SI療法）が実践されます。

個別化アプローチの重要性

すべての子どもが同じように発達するわけではありません。一人ひとり異なる得意・苦手があります。そのため、日本では個々の発達状況や特徴に合わせた「オーダーメイド」の支援が求められています。専門家による評価をもとに、遊びや運動など日常生活の中で無理なく取り入れられる工夫が大切です。

2. 発達段階の評価方法

日本でよく使われる発達評価の重要性

感覚統合訓練を個別化するためには、まず子ども一人ひとりの発達状況を正しく把握することが大切です。日本では、発達段階を知るための評価方法がいくつか広く活用されています。これらの評価により、子どもの得意なことや苦手なことを理解し、適切な支援や訓練プランを立てることができます。

主な発達評価方法

評価方法名	特徴	主な活用場面
新版K式発達検査2020	認知・言語・運動など幅広い発達領域を測定。日本独自の基準を使用。	保育園・幼稚園、小学校入学前の発達確認
乳幼児精神発達診断法（津守式）	質問形式で家庭でも使いやすい。日常生活での様子から総合的に判断。	家庭や保健センターでの簡易チェック
M-CHAT（自閉症スペクトラム症状スクリーニング）	自閉症スペクトラム傾向の早期発見に役立つ。	1歳半〜2歳児健診時など自治体で導入例あり
Sensory Profile 日本版	感覚特性を詳しく評価でき、個別支援計画に直結。	作業療法士による専門的評価時に使用

観察ポイントと日常での注意点

実際に子どもの様子を見る際は、以下のようなポイントにも注目します。

身体の動かし方：バランス感覚や筋力、細かな指先の動きなど
遊び方：同年代のお友だちと比べてどんな遊びを好むか、集中力はどうか
コミュニケーション：言葉やジェスチャー、表情などで気持ちを伝えられるか
感覚への反応：音や光、触れられることへの敏感さや鈍さはあるか
生活リズム：食事や睡眠、排泄などの日常生活の安定度

まとめ：評価結果をもとに個別アプローチへつなげる

このように、日本では多様な評価方法や観察ポイントがあり、それぞれの子どもに合った感覚統合訓練へとつなげていくことができます。保護者や先生が協力しながら、お子さんの「今」をしっかり見つめてあげましょう。

3. 個別化アプローチの必要性

発達状況や特性はお子さま一人ひとり異なります。そのため、感覚統合訓練を行う際には、画一的な方法ではなく、それぞれのニーズに合わせて訓練内容を調整することがとても大切です。日本の療育現場でも、「個別支援計画」に基づいて支援を行うことが一般的になっています。

なぜ個別化が重要なのか

発達障害や感覚過敏・鈍麻などの症状は、同じ診断名でも現れ方や困りごとが違います。たとえば、聴覚が敏感なお子さまと、触覚に鈍感なお子さまでは、適した訓練方法も異なります。無理に苦手な刺激を与えるのではなく、まず安心できる環境や活動から始めて、徐々にステップアップすることで、その子の「できた！」という自信につながります。

具体的な個別化の例

お子さまの特徴	課題例	個別化したアプローチ
聴覚過敏	大きい音でパニックになる	静かな部屋で作業し、ヘッドホンを使うなど刺激を減らす
触覚過敏	手を汚すことを嫌がる	まずは柔らかい布で触れる経験から始め、徐々に粘土遊びなどへ段階的に進む
身体の動きがぎこちない	バランスを取るのが苦手	座位で安定した状態から簡単なバランス運動を取り入れる
視覚に弱さがある	物の位置や形が分かりづらい	色分けや大きさの違いが分かりやすい教材を使う

家庭や園・学校との連携も大切に

個別化アプローチは、ご家庭や保育園・幼稚園、学校とも情報共有しながら進めることで、お子さまの日常生活全体で効果を実感しやすくなります。例えば、ご家庭で実践できる簡単な感覚遊びを提案することで、継続して支援できます。

まとめ：一人ひとりに合ったサポートで成長を促そう

このように、お子さまそれぞれの特性や発達段階に応じて訓練方法を調整することが、感覚統合訓練の効果を最大限に引き出します。一人ひとりの「楽しい」「できた」という気持ちを大切にしながら、無理なく着実にステップアップできるサポートを目指しましょう。

4. 日本の現場で行われている感覚統合訓練の実践例

発達状況に応じた個別化プログラムの工夫

日本の療育現場では、一人ひとりの子どもの発達状況や特性に合わせた感覚統合訓練が重視されています。例えば、感覚過敏や感覚鈍麻など、子どもによって異なる感覚処理の特徴を見極め、それぞれに最適な活動内容を提案します。

実際に使われているプログラム例

対象となる発達状況	主な活動内容	ねらい・特徴
感覚過敏（音・光・触覚）	静かな環境での砂遊び、柔らかい布を使ったタッチング、照明調整した部屋での活動	安心できる空間づくりと段階的な刺激提示で慣れる経験を積む
バランス感覚や運動協調性の課題	平均台歩き、トランポリン、和室マットを活用した転がり運動	安全な和室スペースや日本家屋ならではの畳部屋を利用することも多い
視覚や聴覚に強いこだわりがある場合	折り紙やあやとり、音楽療法（和太鼓・木琴）など日本文化を取り入れた活動	興味関心を引き出しながら集中力や社会性も育む工夫がされている
社会的スキルの支援が必要な場合	集団遊び（だるまさんがころんだ、おにごっこ）、季節行事への参加（お正月遊び、七夕製作）	日本独自の伝承遊びや季節行事を通じてコミュニケーション力向上を目指す

日本ならではの取り組み事例

地域資源との連携：公園や神社での外遊び体験

日本各地には四季折々の自然が豊富な公園や神社があります。これらの場所を活用して、落ち葉拾いや水遊び、石段登りなど五感を刺激する活動が行われています。特に地域コミュニティと連携しながら、安全面にも配慮している点が特徴です。

家庭との協働：日常生活動作への応用支援

家庭での日常生活にも感覚統合訓練を応用できるよう、例えば「箸や茶碗の使い方」「浴衣の着脱」など、日本ならではの生活習慣に合わせた指導が行われています。保護者へのアドバイスシートを作成し、自宅でも簡単に続けられるアイデアを提供しています。

まとめ表：日本独自の実践ポイントと工夫例

実践ポイント	具体的な工夫例
日本文化・生活環境への配慮	和室や畳スペースの活用、日本伝承遊び・季節行事プログラム導入等
家族との連携支援強化	家庭でできる練習方法シート配布、保護者面談・相談会開催等
地域資源との連携推進	地域公園・神社等での外活動体験会実施、安全対策ガイドライン作成等
個別最適化アプローチ徹底	一人ひとりの発達状況や興味関心に合わせたプログラム設計・定期的評価等

5. 保護者・支援者との連携

家庭と学校の協力が大切な理由

発達状況に応じた感覚統合訓練では、子ども一人ひとりの特性や成長に合わせた支援が必要です。そのためには、家庭や学校、そして専門家がしっかり連携することが大切です。日常生活での様子や困りごとを共有し合い、同じ目標に向かって協力することで、より効果的な支援につながります。

コミュニケーションのポイント

定期的な情報交換：おうちでの様子や学校での行動について、こまめに伝え合いましょう。
相談しやすい環境づくり：困ったことや気になることがあれば、遠慮せず話し合える関係を大切にしましょう。
前向きなフィードバック：できたことや成長した部分を見つけて、一緒に喜びましょう。

協働体制を作るステップ

ステップ	具体的な方法
目標の共有	家庭・学校・専門家で子どもの目標を話し合い、一緒に決めます。
役割分担	それぞれができるサポートを確認し、分担して取り組みます。
定期的な振り返り	進捗や成果を一緒に確認し、必要に応じて支援内容を見直します。

実際の取り組み例

例えば、おうちでは感覚遊びを取り入れたり、学校では落ち着いて過ごせる環境調整を行ったりします。その内容について日記や連絡ノートで情報交換することで、子どもが安心して過ごせる時間を増やすことができます。また、「ありがとう」「助かりました」といった感謝の言葉を伝え合うことも信頼関係を深めるコツです。